イギリスが社会契約説を理解していたら、アメリカは独立しなかった

イギリスの議会は、アメリカ人の代表の意見を聞かずに「印紙条例」を可決し、アメリカ人に課税しました。これは社会契約に反するので、アメリカ人は「代表なくして課税なし」というスローガンで印紙条例に反対しました。

ところが当時のイギリスの首相をはじめとして為政者たちは、アメリカ人が何に不満を感じているのかよく分からなかったらしいのです。イギリスには、大昔から国があってイギリス人が住んでいました。イギリス人には、みんなで集まって国を作った、などという経験がないのです。

イギリスの政治家たちも社会契約説という政治理論は知っていましたが、ただのフィクションだと思っていました。だからアメリカ人が社会契約説を引き合いに出して印紙条例に反対するのを聞いても、「社会契約説など口実で、もっと税金をまけろ、というのが本心なのだろう」と事態を見くびっていたのです。

だからイギリス政府はろくに返事もしないで、印紙条例を強行しました。その後も次々とアメリカ植民地に課税する法律を強行しました。アメリカがイギリスから輸入するお茶にまで関税をかけました。

そこで頭にきたアメリカ人は、イギリスから輸入してボストンの港に積んであった茶の貨物を海に投げ捨てて(ボストン・ティーパーティー事件)、独立戦争を始めました(1775年)。

余談ですが、最近アメリカで「ティー・パーティー」という保守派の市民団体が勢力を増してきました。これはアメリカ独立当時の精神に戻ろうと考えている人の団体です。

イギリスの政治家がアメリカ人の言うことを理解して、アメリカ人の代表をイギリス議会の議員にしていたら、アメリカの独立は防げたはずです。