「イラン核合意」に関するアメリカとイランとの紛争に関する前のシリーズの最後に、「安倍総理が両国の仲介を始めたのだから、この際日本は、アメリカの世論を和平に誘導したらどうか」ということを書きました。
「いくら日本が中東の平和に無関係でないとはいえ、単なる仲介者でしかない日本がそこまでしなくてもいいだろう」という反論が出てくると思います。それはそのとおりなのですが、いくつかこれをやるメリットがある、と私は考えます。
- せっかく仲介を始めて中東の和平を実現しようとしているのだから、誠実にその役目を果たすつとめが日本にあるということです。そのためには、アメリカ国内の世論を和平に導かなければなりません
- アメリカの世論を和平の方向に導く過程で、アメリカに対し日本はどのような国であるのかを分からせることができます。アメリカとイランの紛争は宗教の対立が原因ですから、日本も自らの宗教的な立場を説明することになり、アメリカとの類似点と相違点を明らかにできるのです。
- 日本以外の諸外国は、アメリカの国内世論を自国に有利に導こうとして活発な工作を仕掛けていますが、日本はほとんどやっていません。その結果、日本は大いに国益を失っています。近年「従軍慰安婦」捏造で支那・朝鮮に対抗するために少し始めましたが、まだ不十分です。
- 仲介者という第三者の立場で、アメリカの国益を叶えようとして行うので、アメリカ人も日本のやることを容認し、変な勘ぐりを避けられるというメリットがあります。またこのアメリカの世論誘導によっても直接的な日本の利益はないのも警戒されない理由です。ただし長期的な視点に立てば、この世論導入によって得られる日本の国益は非常に大きいです。
アメリカでは、国策を一定の方向に誘導する活動をロビー活動といっています。これには、国会議員に直接働きかける一種の請願(狭義のロビー活動)と、広く世論を自分の味方につける一種の広報活動(広義のロビー活動)の二種類があります。
「世論誘導」という言葉はあまり響きが良くないし、実態ともすこし離れているので、これから「ロビー活動」という言葉を使います。