ロビー活動は、アメリカでは一大産業である

アメリカで政治的な請願や広報活動を「ロビー活動」ということになったのは、150年前です。南北戦争(1861年~1865年)の英雄だったグラント将軍はアメリカの大統領になりました(1869年~1877年)。

彼の奥さんは葉巻が嫌いで、夫の喫煙を禁止していました。そこでグラント大統領はホワイトハウスを抜け出して、近くのウィラード・ホテルのロビーで葉巻を吸っていました。そのことを知った関係者は、ホテルのロビーに姿を現す大統領を待ち受け、様々な陳情を行ったのです。

ロビー活動は、人脈を利用して陳情の内容を実現しようとするもので、大統領や国会議員と面識のない陳情者は、人脈を持っているロビーストを代理人に立てるようになりました。なおグラントは、スキャンダルと汚職にまみれた大統領として有名です。

アメリカでは、ロビー活動は一大産業です。ワシントン周辺で活動しているロビーストは約3万人と言われています。彼らは高給取りですから、仮に収入と経費を合わせて一人当たり年間5000万円と低めに想定しても、1兆5000億円になります。

ロビーストが受け取る手数料だけで1兆5000億円であり、彼らが仲介して政治家に支払われる政治献金やもっと怪しい金がさらに別にあります。これらのほとんどは狭義のロビー活動(陳情)に使われ、広義のロビー活動(広報)に使われる金はまた別です。国会議員を辞めた者の半分近くがロビーストになっているということなので、よっぽどロビー活動というのは儲かるのでしょう。

客から依頼を受ければ、ロビーストは効果があると思うことは何でもやります。権限を握っている政治家に政治献金をするだけでなく、テレビや新聞に公告を出したりします。大学教授に研究費を出して、依頼人に有利な研究結果を発表させるなどは、良く使われる手です。

要するに、ロビーストは単なる依頼人と政治家との間の仲介役だけではなく、専門知識を駆使して依頼人に役立つ情報を提供するコンサルタントでもあります。