マスコミの中立は、仏教の発想

日本のマスコミは「中立」を建前にしています。日本以外の国のマスコミは中立などを標ぼうせずに、自分の政治的立場を明確にし、その立場から報道をしています。中立を主張するマスコミというのは、世界的にはかなり珍しい存在です。

スイスは永世中立国ですが、中立を維持するためにものすごい努力をしています。国民皆兵でわずか780万人の人口で、20万人以上の予備役兵がいます。スイスの企業の幹部と会うのは容易ではありません。会社のトップは、一年の半分ぐらいは軍隊で働かなければならず、その間会社の仕事ができないからです。

このように、中立を維持するためにはものすごい努力が必要です。日本のマスコミは何の努力もせずに気楽に中立が実現できると思っていますが、実際は非常に偏向しています。

実は、「両極端を排して真ん中に立ってものを考える」というのは仏教の考え方です。「中立」というのは仏教用語なのです。「極端」というのも仏教用語で、「極端なことを言うな」などと悪い意味で使います。中立を標ぼうする「中央公論」という有名な雑誌は、仏教を学ぶ学生が創刊しました。

「スッタニパータ」という最古の仏教経典には、「極端なことを言ってはならない。真ん中が良い」と書かれています。ナーガーリュジュナ(竜樹)という非常に有名な大乗仏教の理論家がいますが、彼も真ん中が正しいと考えていて、『中論』という論文を書いています。

日本のマスコミが「中立」を主張していて、それが実現できると考えているということは、大乗仏教の発想でものを考えている証拠です。もちろん多くのマスコミ人は宗教に関心などなく、自分たちの発想が仏教から来ていることなど夢にも思っていないでしょう。

彼らが言う「中立」とは、自分たちをいったん社会の外に置いて、その視点から社会を観察するということです。これはまさに社会から離脱するという大乗仏教の僧侶の発想です。そして大乗仏教の教義の通りに、「俗世間は汚辱に満ちており、そこに住んでいる未熟な者たちが集まって国家を作っている。従って国家は悪いことをする」と考えるわけです。

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