RCEPはブロック経済を目指している

RCEPに関して、どのような意見があるのか私は調べてみましたが、その中で経済評論家の三橋貴明先生の意見が参考になりました。彼は、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)などの国際的経済協定そのものに否定的でした。関税や経済政策の中身を自国で決定できず相手国の了解を要するという仕組みは、国家の主権を侵害するもので許しがたい、と考えるのです。

確かに、三橋先生が言うように、FTAやEPAは国家の主権を否定するグローバリズムの考え方です。Freedomの考え方が強固で、グローバリズムの発想が出てくる前の19世紀には、自国の経済政策を変えるには相手国の了解が必要だ、などという発想はありませんでした。

幕末の幕府役人は、関税が国内産業を保護するための重要な手段だということを理解せず、ただ税収の一つだと思っただけでした。その金額がわずかなので、欧米の要求を受け入れ、関税自主権を放棄しました。その失敗に気づいた維新後の明治政府は、条約改正して関税自主権を取り戻すために、涙ぐましい努力をしました。その結果、明治の末期に日本は条約改正に成功し、関税自主権を取り戻しました。

昭和初期に大恐慌が起きた時、各列強は自分の勢力圏の周囲を関税で囲ってブロック経済化しました。このために列強間で経済的軋轢が高まり第二次世界大戦が起こりました。戦後にこの反省から、国際的な経済協定を作るようになりました。国際的経済協定は、もともと各国の主権を制限して戦争を防ぐのが目的です。

戦後最初にできた国際経済協定がGATT(関税及び貿易に関する一般協定)で、1947年にできました。これはアメリカ主導で自由主義陣営に属する諸国が加盟したもので、共産圏に対抗する一種のブロック経済の意味合いもあります。

1990年頃にソ連が崩壊して社会主義・共産主義の勢力が衰えたので、GATTもWTOに進化し、世界中の国がWTOの規約を守ることを条件に参加できるようになりました。中国は2001年に加盟しました。それから20年経ちますが、中国はWTOの規約を守ろうとしていません。

WTOは参加国が多く、利害関係が錯綜しているので、あまり機能しなくなりました。そこで最近になって、FTAやEPAなど数か国の間だけの国際経済協定が、作られるようになりました。世界は今、ブロック経済化がまた進んでいる、と理解することができます。

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