日本はRCEPで主導権をとれるのか?

私はRCEPに関するいろいろな人の意見を調べてみました。面白いことに、賛成意見と反対意見がきれいに分かれているのです。

反対派の多くは、協定の中身に反対するというよりも、中国が参加しているからダメだ、と考えています。一方賛成派は、協定の中身に注目して「この程度のものなら良いだろう」と考えています。どうやら中国の特殊性に注目していないようです。RCEPの締結を決めた菅総理・二階幹事長らの政府首脳や外務省の役人たちもそういう考えのようです。

問題の核心は、なぜ中国が入っている国際的経済協定を締結したのか、ということです。それは、様々な偶然が重なったためです。

中国は東南アジアに経済進出しようとして、韓国を仲間に入れてASEANとFTA(物の関税を下げるだけの協定)をつくろうとしました。一方日本は、インドと東南アジアを取り込んで、中国を包囲する経済圏を作ろうとし、オーストラリアとニュージーランドにも参加を呼びかけました。そのうちに、別々の経済圏構想を一つにまとめようということになったわけです。

日本は、インドを入れて中国をけん制させることで、RCEPの主導権を取れると考えていました。ところが1年前にインドがこの構想から離脱しました。インドの対中貿易赤字は2兆円以上あるのですが、RCEPができてさらに関税が下がれば、貿易赤字がさらに拡大します。それが耐えられないのが原因の一つです。

それだけでなく、インドと中国は国境紛争を抱えており、非常に仲が悪いです。そのような国と経済的な協力関係を作ることなどできません。

インドという大きな要素が抜けたため、日本はしばらく様子を見ているべきでした。ところがその決断をせずに、インドはいつでも参加できるという条項を作っただけでした。外務官僚は、RCEPを締結させること自体を目的にしてしまったようで、日本の国益という本来の目的意識が希薄になっていたようです。

そのうちに、アメリカが大統領選挙の混乱で内向きになり安倍総理もいなくなった間に、中国主導で調印がされてしまったわけです。

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