日本人は、異人種も移民も同じ人間ではないか、と考えている

日本人は欧米の人種差別・移民排斥問題に鈍感です。理由のひとつは、日本ではこの種の問題が相対的に小さいからです。アメリカの黒人は総人口の12%にのぼり、西欧の移民も12~13%を占めるのに対し、日本では朝鮮系の帰化人・永住権所持者と現在日本に在住している外国人を合わせても人口の2%程度です。

もうひとつの理由は、日本には人種や文化の違いにより人を差別する宗教が存在しないからです。それどころか、仏教というこれらの差別を否定する宗教が、国民の心に根を下ろしています。そのために、人種や民族差別をしない社会が当然だと思っています。

おしゃか様が生きていた時代(今から2300年ほど前)のインドでは、白人しかバラモン教の僧侶になれませんでした。おしゃか様はこれに反発して、有色人種も悟ることができると考えました。この教えから仏教が生まれたので、仏教にはもともと人種差別を否定する伝統があります。

「仏説無量寿経」という大乗仏教のお経は、浄土宗や浄土真宗が重視するもので日本人に非常に大きな影響を与えています。その中に「人間の肌に色は全て金色だ」と書かれています。肌の色に白・黄色・黒色などの差があるように見えるのは、目の錯覚なのです。

多くの日本人は大乗仏教の影響で、「肌の色が違っても人間の中身に違いがあるわけではない。みな平等だ」という考えを心の底で信じています。従って、日本に来た外国人が我々と違うのも、日本の習慣に慣れていないからだ、と考えています。

日本人の中にも移民を嫌がる人が非常に多いですが、その理由が欧米人とは違います。白人のキリスト教徒は、イエス・キリストと同じ正しい心を持っているのに対し、異教徒や異人種はそのように作られておらず劣った者たちだ、と考えているのです。神は自分たちと彼らとをまったく別の人間として作ったのです。

日本人は、日本文化を特殊なものだと考えています。そのために異民族は日本の習慣を容易に習得できず、その結果日本で問題ばかり起こす、と考えています。要するに文化の違いであって、人間そのものに違いはない、と考えています。

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