日本人の多くは、キリスト教の聖職者は結婚してはいけない、と思っているようですが、これは誤解です。
カトリック以外のキリスト教宗派の聖職者は結婚しています。今のカトリックの神父は確かに結婚しませんが、11世紀までは結婚していました。
中世、カトリック教会は、信者からの寄進によって莫大な財産を持っていました。ところが多くの神父が、家族の生活のために教会財産を横領しました。そこで、神父が結婚せず家族を持たなかったら横領をしないだろうと考え、カトリック教会は神父の結婚を禁止したのです。
神父が結婚しないのは、神が命令しているからではありません。ただカトリック教会という組織を守るために、信仰とは無関係の理由でそのようになっただけです。
結局、各宗教の結婚に対する考え方を整理すると、仏教の僧侶は結婚してはいけませんが、キリスト教の聖職者は結婚できます。ただその原則が、歴史的な経緯で歪められています。なお、神道の神主は結婚して、先祖からの地位を子孫が継承しています。
各宗教の結婚に対する態度は、その宗教の基本的な原理から来ているのです。
仏教は、社会から離脱し、人間関係を作らない態度が望ましい、と考えます。従って、現在の僧侶が街中に住み家族を持つことは、その教義から大きく逸脱しています。
ただし、僧侶は山の中で人と交わらずにひっそりとくらすべし、という戒律は形式的には残っています。どのお寺も正式名称が「○○山、××寺」と山の中にあることになっているのは、このためです。
キリスト教は、社会の中で人間同士が助け合うのが正しい、と考えます。従って、聖職者も社会生活を続け、結婚して濃厚な人間関係を持っても問題ありません。