宗教改革が始まった頃の西欧は、宗教が原因の革命や戦争が相次ぎ、騒然とした時代でした。自分の信じる宗教のために人がここまで熱狂的になれることが、私には不思議でした。そこで当時のプロテスタントの生活ぶりを調べてみました。伝記作家のシュテファン・ツヴァイクが書いた『権力とたたかう良心』を見てみましょう。
この本は、ルターより少し後輩のプロテスタントの指導者だったカルヴィン(フランス語でカルヴァン)のことを書いています。彼が始めた改革派長老教会は、イギリス・オランダ・アメリカに普及し、今ではプロテスタントで世界最大の勢力を誇っています。
ちなみに、今度のアメリカ大統領であるトランプさんもこの宗派の信者です。
カルヴィンはスイスのジュネーヴでの布教に成功し、市民の大多数を信者にしました。その結果、カルヴィンがジュネーブ市の独裁者になりました。ツヴァイクは、カルヴィンをヒットラーになぞらえています。
カルヴィンは、信者は寝ても覚めても神の教えを心に抱いて生活すべきで、娯楽に気をそらせてはならない、と説きました。そこで俳優や楽士・芸人をすべてジュネーヴから追放しました。恋愛などに心を向けることも法度で、若い男女が二人で夕方に公園を散歩するのを監視しました。
婚約中の男女が結婚を待ちきれずに一緒に寝たことがばれた時、カルヴィンは二人の結婚を禁止しました。また、自分の教えに逆らった者を火あぶりの刑にしています。
このような極端なことをやったにもかかわらず、カルヴィンは指導者として市民から絶大な尊敬を受けていました。そして暗殺されもせず、ベットの上で大往生しました。