新憲法は不要

日本が戦争に負けた年(昭和20年)に、美濃部達吉先生は政府から憲法について意見を求められました。以下は先生の回答です。

「若シ現在ノ政治上ノ必要ニ応ズル為ナリトセバ、特定ノ条項ノ改正ヲ以テ足レリト為スベキモ、果シテ其ノ必要在リヤ否ヤハ疑問ナリトス。新日本ヲ建設シ民心ヲ一新スル為ニハ寧ロ其ノ全部改正ニ着手スルヲ可トセザルヤ。」

「憲法を改正する実務的な必要はない。しかし民心を一新するためなら、いっそのこと全部作り変えるという考えもあるかもしれない」、という考えを、述べています。

美濃部達吉先生は東京帝国大学の教授でしたが、その自由主義的な学説が保守派から攻撃され、無理やりに隠居させられました。このような先生さえ、大日本帝国憲法は問題がないから変える必要がない、と言っています。

確かに大日本帝国憲法は、国民の自由と平等を保障し三権分立を規定しているので、必要十分な憲法だという先生の考えはもっともです。細かい制度上の問題が出てくれば、その都度解決していけば良いのです。

現在の憲法学の学者はみな、美濃部先生の弟子です。その彼らが先生の意見に逆らって「大日本帝国憲法は問題だらけだった」と言っています。おそらく、大学の教授という立場上そういわざるを得ないのだ、と私は考えます。

憲法にどのような文言が書かれているか、が現在大いに議論されています。しかし、問題はむしろその中身をどのように解釈するか、ということだと思います。

自由という考え方をきちんと理解すれば、国家が武力を放棄するという結論は出てきません。また、憲法がどれだけ国民の支持を受けたかを考えれば、果たして現在の日本の憲法が合法的に成立しているか、まで問題になると考えます。

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