中国とロシアの軍艦合わせて10隻が、日本海で合同演習をした後、10月18日に津軽海峡を通過して太平洋に抜けました。さらにそのまま南下して、22日には大隅海峡を通過して東シナ海に入りました。日本列島をグルッと一周したわけです。津軽海峡も大隅海峡もその中央部は公海なので、中央部の公海を通過する分には、日本としてはただ見ていることしかできませんでした。
この事件には二つの問題があります。
・中国やロシアの海軍は、なぜ日本の海峡をわざわざ通るのか
・津軽海峡も大隅海峡も幅が狭いので、日本の領海のはずです。それなのになぜ中央部分が公海になっているのか
近年、北極海航路が注目を浴びています。東アジアからヨーロッパに貨物を運ぶのに、北極海を通るほうが、マラッカ海峡やスエズ運河を通る南方航路より距離が短いのです。近年の地球温暖化によって、北極海航路の利用可能期間が伸びていて、輸送量も増えています。
・ 喜望峰経由 スエズ運河経由 北極海航路
横浜 → アムステルダム 14,448キロ 11,133キロ 7010キロ
上海 → アムステルダム 13,796 10,557 8046
北極海航路の年間輸送量
2006年 2013年 2015年 2017年 2019年
196万トン 393万トン 539万トン 1069万トン 3000万トン
津軽海峡、大隅海峡、宗谷海峡は北極海航路の出入り口にあたる非常に重要な場所です。だから中国もロシアも、これらの海峡を通過する権利をしっかりしたものにしたいのです。
また中国にとっては軍事的な意味も大きいです。アメリカ海軍の艦艇は、台湾海峡や南シナ海を「航行の自由作戦」と称して自由に通過しています。中国の軍艦が、津軽海峡や大隅海峡を通過しているのは、その意趣返しという意味があります。そして日本領のすぐ近くを堂々と軍艦が通るというのは、日本の主権を軽んじるという意思表示でもあります。実際に、このニュースを中国のマスコミが報じたところ、中国人が熱狂したそうです。
領海は海岸から12海里(22キロ)というのが、我々の常識になっています。両岸が自国領だったら、24海里(44キロ)の海峡が領海になります。津軽海峡の幅は18.7キロ(10海里)、大隅海峡は42キロ(22海里)なので、両方とも日本の領海のはずです。