戦前の日本人は、自由がキリスト教から来たことを知っていた

戦前の東京帝国大学に、高木八尺(やさか)という先生がいて、アメリカ憲法史を教えていました。彼は著書の中で、アメリカはイギリスから移住したプロテスタントが作った国であることを強調しています。

そして人権(自由と平等の二つの権利の総称)は、キリスト教の教えから出てきた、と断言しています。

高木先生は、キリスト教徒でアメリカの専門家で東大の先生だと三拍子そろっているのでアメリカ人に気に入られ、敗戦後にアメリカ占領軍と日本政府のパイプ役をつとめました。彼は、クエーカー教というプロテスタントの一派の信者でした。

クエーカー教は戦争を絶対的に悪いことだ考えています。戦争絶対反対という思想はキリスト教にはなく、クエーカー教の教えは特異です。従ってクエーカー教は信者の少ない弱小宗派です。この彼が、新しい憲法の制定に関与したので、憲法9条(武力放棄)の条項を積極的に推進した可能性もあります。

また、東京帝国大学には美濃部達吉という憲法の先生もいました。彼は戦前に、『人権宣言論争』というドイツの学者の書いた本を翻訳して出版しました。

この本は、フランス革命やアメリカ独立戦争のときに出された人権宣言はキリスト教の教えから出てきた、と主張しています。従って美濃部先生も、自由と平等はキリスト教から来たということを教えていました。

このように戦前の日本では、自由と平等がキリスト教の教えだということは別に秘密ではありませんでした。従って法律をちゃんと学んだ人はこのことを知っていました。