浦島太郎は、助けた亀に浜で話しかけられました。亀が人間の言葉をしゃべったので、浦島太郎は、この亀が神様の使いであることがすぐに分かりました。亀が「自分の背中に乗れ」といったのも、神の太郎に対する命令なのです。
亀の背中に乗れば海底に連れて行かれることは、誰でも分かります。普通の人は、溺れ死ぬ危険のあることなどできません。ところが太郎は、神の非常識な命令に素直に従いました。その結果、彼は乙姫様と幸せな時を過ごすことができました。
神道は、どんなに社会のルールから外れた神意にも素直に従うことが正しい態度だ、と考えます。このような態度を「正直」とか「誠」と呼んでいます。花咲爺さんも人間の言葉を話す犬が吠えるので、裏山の荒れ地を掘りました。
「花咲じじい」という童謡は、この爺さんのことを「正直じいさん」と呼んでいます。正直とは、「ウソをつかない」という意味だけでなく、「神の意思に素直に従う」という意味も含まれています。このような態度を中世の日本では「正直」と言っていましたが、幕末になると「誠」とか「至誠」というようになりました。
神の教えに照らして正しいことであれば、その行為がいかに世間のルールに反していても、ためらわずにそれを行うことが、「誠」です。元禄時代の日本人も四十七士の態度に「誠」を感じました。