TPPは自由主義経済の進化形

昨年まで、アメリカや日本などの12の環太平洋諸国間でTPPの交渉が妥結し、後は各国の国会の承認を得れば発効するまでになっていました。ところがトランプさんが大統領になって、この合意をつぶしてしまいました。

TPPに関しては、農業分野や国民健康保険で混合医療を認めるなどの特定案件が良く話題になっています。しかしこれとは別の大きな問題があります。

TPP加盟国は協力して「規制整合小委員会」を作ることになっています。この委員会は参加各国の国内の規制が貿易の妨げになっているか否かを調査し、必要があれば是正を勧告するのです。もしもグローバル企業がロビー活動を行って自社に有利な勧告を出させれば大変なことになります。

一つの例を挙げると、日本では遺伝子組み換え農産物を使った食品にはその旨を表示しなければならない、という規制があります。ところがアメリカではこのような表示の義務はありません。アメリカのバイオ産業が政府に強力に働きかけて(多額の献金をして)、国民に遺伝子組み換え農産物の危険性を知らせないようにしているからです。

もしもTPPが成立したら、モンサントなどの遺伝子組み換え種子販売の大手は「規制整合小委員会」に働きかけて、日本の規制を不適切だと勧告させる危険性大です。遺伝子組み換え種子だけでなく、医療、農業、流通などの様々な分野について、この委員会が日本政府に勧告してくることが予想されます。これは日本の主権の侵害です。

このような動きはまさに、「良い商品を売って儲けることは正しい行為である。この実現の障害になる規制やルールを打ち破っても構わない」という「経済的自由」の考え方から来ています。

トランプさんは、経済的自由の行き過ぎはアメリカを不幸にすると考え、TPPを葬りました。私もトランプさんの考えに賛成です。貿易を拡大するのは悪いことではありませんが、自国の伝統を守り、国益に沿って行うべきです。