民主主義が成熟していない

日本ではあり得ないような権力の私物化などがアジア諸国で起きると、色々な人が「まだ民主主義が成熟していないから」と解説しています。ところが私は、この説明を聞くたびに違和感を覚えます。

「未成熟」とは、時間が経てば成熟するということです。しかし私は、これらの諸国の民主主義は未成熟なのではなく、もともと無理な注文ではないのか、と思うのです。

イギリスなどの西欧諸国を見ても分かるように、近代国家と議会制民主主義はセットの関係です。日本でも明治になって近代化を進め、明治20年代には、憲法を持ち、国会が有効に機能していました。日露戦争(明治37~38年)で日本が勝てたのはなぜだろうと、世界中の国が考えました。

その結果「日本は憲法と国会を持った近代国家なのに対し、ロシアはただの専制国家だからだ」、という結論を出しました。

国民がその気になれば、30年間で民主主義を実現できます。ところが「民主主義が成熟していないから」と批判されている国々は、第二次世界大戦で独立を果たしているのに、その後70年たっても未成熟のままです。

主張」に書いたように、近代社会とは、血縁関係にない他人どうしが助け合う社会のことです。西欧諸国は、キリスト教の「隣人愛」によって他人どうしが助け合う社会を作り上げました。また日本は、「誠」によってこれを成し遂げました。

民主主義も同じで、自分の損得はとりあえずわきに置いて、「何が社会にとって有益なのだろう、何が正しいのだろう」と議論を重ねることです。つまり「隣人愛」や「誠」が民主主義の根底にあります。

19世紀に近代国家を作れなかったアジアの諸民族は、親族や自分の所属する階級の利益を考えるだけで、他人の利益をあまり考えないのです。従って民主主義もいつまでも「未成熟」のままなのです。

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