日本人は、西欧人の人種差別のみを深く考えずに指摘した

人種差別についての考え方の根底が日本と欧米では違うので、議論をしてもどちらが正しいかという結論が出てきません。欧米の国民の多くは、キリスト教の考え方から人種差別が絶対に間違っているとは思っていませんでした。

日本と議論しても無意味なので、欧米諸国は日本を仲間はずれにして、距離を置こうとしはじめました。日本としても提案が拒否されたことによって具体的な国益が害されたわけではないので、徹底的に争うわけにも行きませんでした。

結局、日本がパリ講和会議に人種差別撤廃案を出したことによって欧米列強は、「日本が自分たちの仲間でなく、特殊なめんどくさい国である」と改めて認識しました。そしてこれ以後、アメリカ・イギリス・フランス・オランダなどアジアに植民地を持っている欧米列強の日本敵視政策が露骨になっていきました。また日本国内でも、欧米列強に対する敵愾心が高まりました。

昭和天皇がいみじくも、「国際会議で人種差別撤廃案を提案したことが大東亜戦争の原因だ」と述べられた通りなのです。

戦後の日本では、「日本は大東亜戦争に負けたが、日本が戦争したおかげでアジア諸国は独立することができた」とよく言われます。たしかにその通りなのですが、この戦争で日本全土が焦土となり、300万人以上の日本人が亡くなりました。他国を独立させるということが、このような大きな犠牲と引き合うほど日本にとって価値のあることだったのでしょうか。

また、アジア諸国は独立後、人間を差別しない国を作ったでしょうか。
支那人は自分たちだけを文明人と考え、周辺民族を野蛮人と蔑んできました。インドにはカースト制度というものすごい人間を差別する制度があります。朝鮮人社会における、両班という貴族階級と庶民の間の差別も相当深刻です。「人類みな兄弟」と思っている日本人のほうが、世界的に見れば特殊なのです。

日本人は、自分たちの人種や民族に対する考えが特殊であるということに気がつかず、アジアの諸民族の間の差別構造には注目せず、欧米人の人種差別のみを深く考えずに指摘してしまったのです。

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