ローマ国籍を持っていても、あまりいいことはなかった

昔から世界中のほとんどのところで、「戦争の際に資金援助をしてくれる人よりも、戦士になって戦いに参加する人のほうが偉い」と決まっています。湾岸戦争の時、軍隊を派遣してクウェートを守ってやった国々に対しては、クウェートの首長は感謝の言葉を述べました。しかし、1兆円を払っただけで軍隊を派遣しなかった日本を、彼は無視しました。

日本でも西欧でも、年貢を払う農民よりも、戦って血を流して領民を守る武士の方が偉いに決まっていました。ローマでも同じで、ローマ国籍を持つ成人男子は、建前上は全員が軍隊に行かなければなりませんでした。しかし財産がなく子供の数だけが多い者は、働いて家族を養わなければならないので、実質的には兵役が免除されていました。その代り、参政権も制限されていました。

ある程度の土地があって奴隷や小作人を働かしているローマ人ならば、自分が軍隊に行っている間も家族は生活に困りません。古代ローマの兵士は一般の市民ではありましたが、決して自分が働かなければならないような者ではなく、裕福なエリートで、国民を守ってやることに誇りを持っていました。

カルタゴを滅ぼしたあとローマは地中海全域に領土を広げていきましたが、その時に再度対外政策の方針転換をしています。従来は打ち破った国をそのまま存続させていたのですが、こんどは国を滅ぼしてローマの属州にするようになりました。ローマは自国の軍隊によって属州民を守ってやる代りに、彼らから属州税を徴収することにしたのです。

つまりローマは、自国民の血を流して他人を守ってやるという誇り高い国になり、その辺の並みの国よりも「偉い」国になりました。その代わりに他国を守るために戦争をしなければならないので、ローマ人は戦死をする確率が高くなりました。

ローマ人になったら威張ることができますが、戦死するリスクも増えます。これらの損得を総合的に判断すると、ローマ国籍を持つことはそんなにありがたいことではありませんでした。

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