同じ事実を見聞きしても、その受け取り方は個人ごとに違う

ハイエクは、欧米しか見ておらず、しかも無神論者なので社会の宗教的力を無視しています。従って、ハイエクの経済理論を日本に適用する場合には、この部分を補強しなければなりません。

ハイエクは、人間の経験は脳の中で分類され整理されて蓄積されている、と考えています。人間が外界はこうなっていると思っていることは、実は分類の体系の内容なのです。そこにさらに目や耳などを通して外部から入ってきた情報は、分類の体系に加えられて修正されます。このように分類の体系は新しい情報によって更新はされるのですが、それは本当の外界ではありません。

もともとの分類の体系に含まれておらず、新たに情報として入ってこない事実や、実際に目に見えた事実でも関心がなければ、脳はその事実を無視するため分類の体系に含まれません。

つまり、自分自身が経験したことや先祖から受け継いだ情報は個人ごとに違うので、分類の体系もそれぞれに異なります。実際に大地震を経験した人と、地震をテレビで見ただけの人とでは、その人の脳にある「地震の分類」に入っている内容が違うのです。

だからハイエクは、「人間は無知で非合理だ」と言っています。従って人間は合理的判断が出来ると考えて、多くのデータを数学を使って解析する古典派経済学の手法など意味がない、と考えます。

ハイエクの学説では、日本人と欧米人では脳の中にある分類の体系は違うはずです。伝統文化が違うので形成される分類の体系がもともと違うし、現実に起きている事も日本と欧米では異なるので、違うように修正されてゆきます。

従って、現実の社会で起こった同じことが情報として日本人と欧米人の脳に入っても、それぞれの分類の体系の対応が違います。つまり、日本人と欧米人では、同じ事実を違うように理解するという、当たり前の結論が出てきます。

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