所得補償が社会を蝕んでいく

ハイエクは、「経済的保障という特権が社会を腐食させる」と書いています。

経済的保障には二種類あって、一つはいわゆる「生活保護」や「失業給付」です。これは生活が困窮した人や一時的に失業した人に与えられる「最低生活の保障」です。困っている人を助けるのは当然のことで、これらの制度によって自由競争の仕組みが破壊されるわけではありません。従って、妥当な水準を維持していれば特に問題はありません。

ついでに言うと、日本では在日朝鮮人にも生活保護を与えていますが、これは間違っています。困窮した朝鮮人に生活保護を行うのは朝鮮政府であって、日本政府が日本人の税金を使って行うべきことではありません。

もう一つの経済保障は「特定所得の保障」です。これは、個人や小集団を所得の減少から守ることを目的としています。そのために、新規参入ができないような仕組みを作って、製品の供給量を調整し、所得が下がらないようにするわけです。

物の価格や賃金は、買い手や雇い手がそれだけの価値があると考えて付けた値段なので、需要と供給の変化によって変動するのがあたりまえです。それに無理やり介入して「特定所得の保障」を確保しようとすれば、そのしわ寄せが部外者の一般人に行ってしまいます。

需要が減っても価格を下げなければ、一般人の選択の自由を奪うことになります。また価格を需給関係に見合うまで下げればよく売れるようになるのに、価格を下げないので生産量が減少してしまいます。その結果、労働者が解雇され失業が増えます。だから、「特定所得の保障をしてはならない」というのが、ハイエクの結論です。

今まで見てきたように、ハイエクは『隷属への道』で、徹底した自由主義経済を主張し、政府が市場に介入して競争を阻害することに猛反対しています。今にしてみると、彼の主張には、なかなか説得力があります。しかし、彼がこの本を出した1944年は社会主義勢力が強く、彼は「極右」というレッテルを貼られてしまいました。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする