ハイエクは、社会主義に徹底的に反対した

ハイエクは、『隷属への道 The Road to Serfdom』という本を書きましたが、これは経済学の本ではなく、一種の政治哲学の本です。なお原題のserfdomというのは、農奴制という意味です。

この本の中で、彼は「社会主義」に徹底的に反対しています。「社会主義」という言葉は色々な意味に使われていますが、ハイエクは「社会主義」とは「国家が経済を統制しようという考え方」だと説明しています。社会主義の反対語が、個人主義・自由主義です。

ファシズムの国家社会主義もマルクス系の社会主義も、共に国家が経済を統制しようとする考え方なので、彼はどちらの社会主義も結局は同じ考え方だと書いています。ケインズが唱えた政府による公共投資やルーズベルト大統領が行ったニューディール政策も国家が経済に介入しようとするものなので、社会主義です。

ハイエクが『隷属への道』を書いたには1944年で、まだ第二次世界大戦中でした。この本の中でハイエクは、ソ連やナチス・ドイツの社会主義を厳しく批判しています。当時は今よりも社会主義の評価が高かったので、社会主義を徹底的に批判するハイエクは「極右だ」と思われてしまいました。またハイエクは、第一次大戦後イギリスは社会主義に向かっている、と書いています。

そして、「経済的自由がなくても、国民に政治的自由を保障する」などというソ連の宣伝はウソで、経済的自由を放棄したら、国家に隷属してしまう、と主張しています。ハイエクの本を読んでいると、彼は経済学者というよりも哲学者だな、と感じてしまいます。

ハイエクは、自由主義は社会それ自体が持っている自律的な力を最大限に活用しようという考え方であって、自由放任を頑固に主張することではない、と言っています。19世紀の経済政策原理である「自由放任」は未熟な法則であって、政府には経済に対して果たすべき一定の役割はあるのです。例えば政府は、商売に関する法律を整備しなければならず、不正な商行為を取り締まらなければなりません。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする