経済学者のハイエクが脳科学の本を書いた

ハイエクは、人間の脳の働きを研究して『感覚秩序』(1952年出版)という脳科学の本を出しました。今から70年近く前で、当時の経済学者はその内容を理解できませんでした。一方の脳科学者の研究もハイエクのレベルまで達しておらず、専門外の経済学者の本など注目しませんでした。そのために、ハイエクは経済学者から変人扱いされ、忘れ去られてしまいました。

またハイエクは、脳科学の研究成果から、「社会主義経済はダメだ」という結論を出し、『隷属への道 The Road to Serfdom』(1944年出版)を出版しました。ところがその当時は社会主義経済の人気が高かったので、彼は「極右」のレッテルを貼られてしまいました。

さらに彼のドイツ訛りの英語が聞き苦しく、とても優秀な学者とは見えなかったのです。そんなこんなで、ハイエクは忘れられ無名の学者に過ぎなかったのですが、1970年代から風向きが変わってきました。

1974年 ノーベル経済学賞受賞
1979年 サッチャーは、英国首相就任演説で「これが我々の信じるものである」と言って、ハイエクの『自由の条件』を取り出し、経済改革を推進した
1981年 レーガンがアメリカの大統領になり、自由主義経済の徹底と小さな政府というハイエクの主張を取り入れて、経済改革を行った

私はこれからハイエクのことを説明しようと思いますが、まずは脳科学の著書である『感覚秩序』の内容説明から始めます。ハイエクの物の見方を書いているからです。この本の内容を一言で言うと、「人間が外界に存在している物だと理解しているものは、人間が自分の脳の中で分類したものだ」ということです。

例えば、私の机の上には電話機があります。私はこれが電話だとすぐに分かりますが、江戸時代の人がこれを見ても、何だか分からないと思います。私の頭は、「こういう形をしている物は電話機だ」という分類が出来ているのですが、江戸時代の人は電話機に関する知識がないので分類されておらず、電話機を見ても(?)という思いが起きるだけなのです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする