古典的な自由主義経済理論は、今も有効なのか

半年ほど前に、19世紀中頃の世界で信奉されていたFreedomの考え方とそこから出てきた自由主義経済について、ジョン・スチュアート・ミルの『On Liberty(自由論、自由之理)』の内容に沿って書いてきました。自由主義経済体制は、自由放任が原則で、公共事業を行うとか物価統制をするなど政府が経済活動に介入することに反対しています。

第一次世界大戦中にロシア革命が起き、史上初めて自由主義を否定する社会主義国家が誕生しました。ロシア以外の国は、表面上は自由主義体制を維持していましたが、実質的には社会主義の政策を採るようになりました。特に1929年の大恐慌以来、その傾向がはなはだしくなりました。

純粋な自由主義経済の国がなくなってしまったため、「自由主義経済学(古典派経済学)は、いまでも有効なのだろうか」という疑問があちこちで湧き上がってきて、今でも論争が続いています。私は、「自由主義経済学は、いまでも有効である」と考えています。今から、私がなぜこのように考えたのか、を説明しますが、まずは「なぜ、世界中が社会主義化したのか」という歴史的経緯を説明しようと思います。

1929年に大恐慌が起きた時のアメリカの大統領は、共和党のハーバート・フーバーでしたが、彼は大恐慌の克服に失敗しました。その結果、1933年の大統領選挙では、民主党のフランクリン・ルーズベルトに負けて、再選を果たせませんでした。

大恐慌が起きた時、フーバー大統領はこの現象を、昔から幾度となく繰り返し起きている景気循環の一環だと思っていました。そして自由主義経済理論に基づいて、そのうちに市場は自律回復してくると考えていました。

彼はラジオ放送で、「もう少しで景気が回復する。しばらくの辛抱だ」と国民に訴え続けました。国民を激励すれば、みんなの気持ちが前向きに変わり、みなが消費をするようになって景気が回復する、と考えたのです。

しかしフーバーのもくろみは外れ、アメリカの景気は回復しませんでした。失業率は25%という高水準に高止まりしたままでした。古典的な自由主義経済理論は本当に正しいのか、という疑問が湧き上がってきたのです。