天皇陛下が講和大権に基づいて条約を結んだ、と考える

六法全書(三省堂版『模範六法』)の冒頭が「日本国憲法」なのですが、次にその英訳文が掲載されています。弁護士の南出先生はこれを見て違和感を覚え、「現行憲法は、憲法ではなく、講和条約だと思った」と書いています。

日本の法律の英訳など、六法全書には普通は掲載しません。掲載したとしても、巻末に補遺として載せるだけです。ところが日本国憲法に限って本文の次に英訳を掲載しているのは、これがアメリカとの間の条約だからだ、と南出弁護士は考えるのです。

大日本帝国憲法第13条は、「天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ議シ及諸般ノ条約ヲ締結ス」と規定していて、天皇陛下が講和を結ぶ権限を保有しています。連合国は日本にポツダム宣言の受諾を要求しました。これに対して天皇陛下は、憲法第13条に規定された講和大権に基づいて、それを受諾しました。

さらに、「日本国憲法」という名のもっと詳しい内容を持つ条約を締結し、最後にサンフランシスコ講和条約を締結して、日本の占領を解きました。このように、南出弁護士は考えています。

この「日本国憲法」に実効性はありませんでした。第9条はポツダム宣言の焼き直しなのですが、3年しか持ちませんでした。朝鮮戦争が始まり、日本は中途半端ではありますが再軍備しました(警察予備隊、後の自衛隊)。警察予備隊は、後方部隊として戦争に参加し、朝鮮半島で機雷の除去作業をして一人死んでいます。彼は戦死者です。つまり、この段階で9条は破たんして、実効性を失っているのです。

朝鮮戦争の際に警察予備隊(自衛隊)が参戦していることに対し、朝鮮、支那、ソ連、アメリカという当事国のどこも、憲法違反として批判していません。第9条が実効性を持たないことを認めているのです。

第9条は「武力による威嚇」も禁止しています。ところが、イラク戦争の際に武装した自衛隊がイラクに進駐しました。これは「武力による威嚇」に当たるはずですが、国会で審議もされませんでした。「日本国憲法」をまじめに考えては、複雑な現実に対応できなくなる、というのも南出弁護士の主張です。

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